自己都合退職でも失業保険を受け取るための基礎知識|受給忘れに注意しよう!

自己都合退職を考える際、失業保険は大きな関心事です。自己都合退職でも失業保険が受給できるのか、手続きに不安を抱く人も多いでしょう。本記事では、自己都合退職でも失業保険を受給する方法を詳しく解説します

記事を読めば、失業保険の受給条件や手続き、注意点がわかります。自己都合退職でも一定の条件を満たせば、失業保険を受給できます。会社都合退職と比べ、給付制限や給付日数の違いがある点に注意が必要です。
» 退職後に必要な手続きとは?漏れなく効率的に進める手順を解説

目次

自己都合退職の基礎知識

自己都合退職は労働者本人の意思で会社を辞める形態です。会社都合退職とは異なり、退職金や失業保険の条件が不利になりやすいです。適切な手続きを踏むのが大切なので、退職届の提出や仕事の引き継ぎなどに気を付けましょう。

自己都合退職とは労働者本人の事情で退職すること

自己都合退職は、労働者が自分の意思で退職を決める形態です。個人的な理由による退職であり、会社側からの要請ではありません。自己都合退職の理由として、以下のようなものが挙げられます。

  • 転職
  • 結婚
  • 育児
  • 介護

自己都合退職では、退職理由を会社に説明する必要があります。会社の承諾が必要な場合もあるので注意が必要です。法律で定められた退職届の提出期限を遵守しましょう。自己都合退職には、失業保険の受給に制限がかかったり、退職金が減額されたり、支給されなかったりするデメリットもあります。

再就職活動に影響を与える可能性があるため、自己都合退職をする前に良く検討しましょう。

会社都合退職との違い

会社都合退職と自己都合退職の違いは、退職理由が労働者側か会社側かという点です。会社都合退職は、解雇や倒産など会社側の理由によるものですが、自己都合退職は労働者の意思による退職となります。会社都合退職と自己都合退職の違いは、失業保険の受給に大きな影響を与えます

給付制限期間は、自己都合退職の場合3か月ですが、会社都合退職は即時です。給付日数は自己都合退職の方が短く、退職金は会社都合退職の方が有利な場合が多くあります。再就職活動においても、会社都合退職の方が有利です。労働条件の不利益変更があった場合は、自己都合退職でも会社都合扱いになる場合があります。

退職理由による待遇の違いを理解した上で、慎重に検討することが大切です。
» 会社都合退職の基礎知識から失業保険の受給方法と注意点を解説

失業保険を自己都合退職でもらうための条件

自己都合退職でも失業保険を受給するには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 失業状態である
  • 雇用保険の被保険者期間が一定以上ある
  • ハローワークに求職の申し込みをしている

条件を満たすと受給の可能性が高まりますが、給付制限があるので注意が必要です。

失業状態であること

失業保険を受給するには、失業状態であることが重要です。失業状態とは、求職意思と能力があるにもかかわらず、就業していない状態を指します。以下の条件を満たしている必要があります。

  • 積極的に求職活動をしている
  • 就労意思がある
  • 労働時間が週20時間未満である
  • 事業を営んでいない
  • 学生ではない

失業状態であることを証明するには、ハローワークに求職の申し込みが必要です。病気やけが、妊娠、出産、育児で働けなかったり、定年や契約期間満了で退職したりする場合は、失業状態とはみなされません。失業状態であると確認できれば、適切な支援を受けられる可能性が高まります。

失業保険の受給手続きを進めるときには、条件を満たしているかどうか確認するのが大切です。

雇用保険の被保険者期間が一定以上あること

雇用保険の被保険者期間が一定以上あるのは、失業保険を受給するための重要な条件です。一般の労働者と短時間労働者の場合は、離職日以前2年間の被保険者期間が通算して12か月以上必要となります。特定理由離職者の場合は、離職日以前1年間に被保険者期間が通算して6か月以上必要です。

被保険者期間の計算は、週所定労働時間が20時間以上の雇用期間が対象となります。複数の事業所で働いていた場合は、それぞれの期間を合算することが可能です。被保険者期間は原則として、賃金支払の基礎となった日数で計算されます。育児休業期間中も介護休業期間中も被保険者期間にカウントされます。

条件を満たせば、失業保険の受給資格を得ることが可能です。条件を満たさない場合は、受給できないので注意しましょう。

ハローワークに求職の申し込みをしていること

ハローワークに求職の申し込みをするのは、失業保険をもらうための重要な条件です。申し込みをするには、ハローワークに出向いて求職申込書を提出する必要があります。求職活動の意思と能力があると示すために、以下のような行動が求められます。

  • 定期的な来所と職業相談
  • 求人への応募や面接
  • 就職活動状況の報告

紹介された求人に対して正当な理由なく、拒否しないのも重要です。職業訓練などの支援プログラムに、参加する意思を示す必要もあります。求職活動の証明書類は、必ず保管しましょう。住所や連絡先の変更があれば、速やかに届け出る必要があります。就職が決まった場合は、直ちにハローワークに報告しましょう。

条件を満たせば、失業保険の受給資格を維持できます。ハローワークに求職の申し込みをするのは、失業保険をもらうために欠かせません。しっかりと手続きを行いましょう。

失業保険を自己都合退職でもらうデメリット

失業保険を自己都合退職でもらう場合、以下のデメリットがあります。

  • 給付制限がある
  • 給付日数が少ない
  • 総支給額が少ない

3つのデメリットは退職後の生活や、次の就職活動に影響を与える可能性があります。十分な準備がないと、条件の悪い仕事を選ぶリスクが高まるため注意しましょう。

給付制限がある

失業保険では、安易な自己都合退職を防ぐために給付制限期間が設けられています。自己都合退職の場合、3か月の給付制限期間があります。制限期間中は失業保険が支給されません。給付制限期間は離職日の翌日から起算されます。特定の理由がある場合は、給付制限期間が短縮されます。

特定理由離職者の場合の給付制限期間は1か月です。正当な理由がある場合は、給付制限が免除されます。給付制限期間中も求職活動は必要です。給付制限期間も雇用保険受給資格期間に含まれるので、活動を怠らないようにしましょう。

給付日数が少ない

自己都合退職の場合、失業保険の給付日数が少なくなります。給付日数は一般的に90〜180日程度で、被保険者であった期間や年齢によって変動します。給付日数は45歳未満で、被保険者期間が1年未満の場合は最短の90日です。45歳以上65歳未満で被保険者期間が20年以上の場合は、最長の180日となります。

特定受給資格者や特定理由離職者と比べても、自己都合退職の場合は給付日数が少なくなります。再就職活動期間が短くなりやすいので、注意が必要です。給付日数が少ないと、生活設計に影響を与える可能性があります。十分な貯蓄がなく、新しい仕事を見つけるまでの期間に経済的な不安を感じる人は注意しましょう。
» 失業保険の受給開始時期や給付期間などをわかりやすく解説!

総支給額が少ない

自己都合退職では、失業保険の総支給額が減少することが多いです。会社都合退職と比較して、自己都合退職に不利な条件が設定される要因は、以下のとおりです。

  • 給付制限期間
  • 給付日数の短さ
  • 基本手当日額の設定

給付制限期間があるため、失業保険の支給開始は遅くなります。給付日数が短いので、受給できる期間も限られます。基本手当日額が低く設定されるケースもあるため、1日当たりの支給額も少なくなりやすいです。自己都合退職の場合、再就職手当や技能習得手当などの追加給付を受けにくいのも特徴の一つです。

長期間働いていた場合でも、支給額が抑えられる傾向にあります。自己都合退職の理由によっては、支給額がさらに減額される可能性もあります。退職を考えるときは、失業保険の支給額についてよく確認しておきましょう

失業保険を自己都合退職でもらうときの計算方法

自己都合退職での失業保険の計算方法は、以下の3要素から成り立っています。

  • 賃金日額
  • 基本手当日額
  • 支給総額

年齢や条件によって計算方法が異なる場合もあるため、注意しましょう。

賃金日額

賃金日額は、失業保険の給付額を計算するときの基準となる数字です。離職前6か月の賃金総額を180で割った金額が賃金日額になります。賃金日額には上限が設定されています。上限額は年齢によって異なるため、注意が必要です。賃金日額には地域別最低賃金の日額という下限額もあります。

賃金日額の計算には、基本給だけでなく賞与や残業代も含まれるため、実際の収入を正確に反映した金額が算出されます。短時間労働者や65歳以上の高年齢被保険者、日雇労働被保険者については、特例や別の計算方法が用いられるのも特徴です。

休業や病気で賃金が下がった場合や、育児休業給付を受けていた場合にも特別な計算方法が用いられます。

基本手当日額

基本手当日額は、離職前の賃金をもとに算出される重要な金額です。基本手当日額は年齢や賃金日額によって変動しますが、一般的には賃金日額の50〜80%となります。基本手当日額に影響を与える要素は、以下のとおりです。

  • 上限額と下限額の設定
  • 60〜64歳の場合の特例
  • 賃金日額の高さによる給付率の変動

自己都合退職の場合は、会社都合退職よりも給付率が低くなる傾向があります。基本手当日額の算出方法は複雑で、ハローワークが計算を行います。2019年8月からは毎月勤労統計調査の変更により、基本手当日額の見直しが行われました。

基本手当日額は雇用保険法で定められており、失業保険を受給するときの基準となる重要な数字です。

支給総額

失業保険の支給総額は、基本手当日額に支給日数を掛けて算出されます。個人の状況により大きく異なるため、一概に金額を示せません。支給日数は年齢や被保険者期間によって変わり、最大で90〜360日分の基本手当が支給されます。自己都合退職の場合は給付制限期間があるので注意が必要です。

給付制限期間は原則3か月で、会社都合退職と比べると総支給額は少なくなります。具体的な支給総額を知りたい場合は、ハローワークで確認するか、自分で計算する必要があります。ハローワークでは、個人の状況に応じた概算の支給総額を教えてもらうことが可能です。

自分で計算する場合は、基本手当日額と支給日数を正確に把握しておきましょう。

失業保険を自己都合退職でもらうときの手続き

失業保険を自己都合退職でもらうには、以下の手続きが必要です。

  • 雇用保険被保険者証をもらう
  • 離職票をもらう
  • ハローワークで手続きを行う
  • 雇用保険受給者説明会に参加する
  • 失業認定を受ける

手続きを正しく行えば、適切に失業保険を受給できます。

雇用保険被保険者証をもらう

雇用保険被保険者証は、退職時に会社から受け取れます。被保険者証は失業保険の手続きに必要な重要な書類です。雇用保険被保険者証は退職時に必ず受け取り、記載内容の確認をしましょう。会社が発行を拒否する場合は、ハローワークに相談してください。被保険者証がない場合も手続きは可能ですが、時間がかかります。

在職中に紛失した場合は、会社に再発行を依頼しましょう。退職後に紛失した場合は、ハローワークで再交付申請をする必要があります。雇用保険被保険者証は、失業保険の手続きに欠かせない書類なので、大切に保管しておきましょう

離職票をもらう

離職票は、退職後に会社から受け取る重要な書類です。2枚セットで発行され、それぞれ異なる情報が記載されています。離職票の1枚目には、個人情報や雇用保険の加入期間が記載されています。離職票の2枚目には、賃金や労働時間に関する情報が記載されているのが特徴です。

会社は、あなたの退職日から10日以内に、離職票を交付する義務があります。受け取ったら必ず内容を確認し、もし記載内容に誤りがある場合は、すぐに会社に訂正を依頼しましょう。離職票は失業保険を受給するときに必要な書類ですが、退職後すぐにハローワークに提出する必要はありません。

離職票を紛失してしまった場合は、会社に再発行を依頼できます。

ハローワークで手続きを行う

ハローワークでの手続きは、失業保険を受給するための重要なステップです。適切な手続きを行うと、スムーズに失業保険を受け取れます。手続き手順は以下のとおりです。

  1. 必要書類を準備
  2. 求職申し込み
  3. 雇用保険受給資格決定の申請
  4. 書類確認と面談
  5. 求職者登録
  6. 雇用保険受給資格者証の受け取り

必要書類には、離職票や雇用保険被保険者証、身分証明書、写真、印鑑、通帳などがあります。ハローワークに到着したら、まず求職申し込みを行います。求職申し込みができたら、雇用保険受給資格決定の申請をしましょう。職員による書類確認と面談を経て、求職者登録を行います。

最後に雇用保険受給資格者証を受け取れます。手続きのときには、初回講習の日程や失業認定日の説明も受けることが可能です。求人情報の閲覧方法や相談窓口の案内も行われるので、しっかりと確認しておきましょう。

雇用保険受給者説明会に参加する

雇用保険受給者説明会に参加するのは、失業保険の受給手続きにおいて重要なステップです。説明会は、ハローワークで開催され、失業保険の仕組みや受給方法について詳しく説明を受けられます。説明会で取り扱われる内容は以下のとおりです。

  • 失業保険制度の概要
  • 受給資格と給付内容
  • 求職活動の方法と注意点
  • 失業認定申告書の記入方法

参加日時は指定されるので、必ず指定された日時に出席する必要があります。説明会は通常1〜2時間程度で行われます。参加するときは、身分証明書や必要書類を忘れずに持参してください。説明会中には質問や相談の機会もあるので、不明点があれば積極的に質問しましょう。

失業認定を受ける

失業認定を受けるには、失業状態が続いているかを確認するため、ハローワークに4週間ごとに来所する必要があります。失業認定を受ける手順は以下のとおりです。

  1. 失業認定申告書の提出
  2. 求職活動状況の報告
  3. 求職活動実績の提示

手続きを行うと、基本手当が支給されます。正当な理由なく認定日に来所しないと、手当は支給されません。病気やケガで来所できない場合は、事前に連絡するのが大切です。就職が決まった場合も、速やかに報告する必要があります。虚偽の申告は不正受給となり、罰則の対象になるので注意が必要です。

適切に失業認定の手続きを行うと、スムーズに失業保険を受給できます。

失業保険を自己都合退職でもらうときの注意点

自己都合退職で失業保険を受給するときには、以下の注意点があります。

  • 不正受給のリスク
  • アルバイトやパートの制限

注意点を理解して適切に対応し、トラブルを避けてスムーズに給付を受けましょう。

不正受給にはリスクがある

不正受給は大きなリスクを伴います。虚偽の申告や書類の偽造によって、失業給付金を不正に受け取るのは法律違反です。不正受給が発覚した場合、受給した給付金の全額返還や詐欺罪による刑事罰、今後の失業給付の制限などの厳しい処分を受けます。不正受給の調査は厳格に行われ、監視期間も長期に及びます。

社会的信用の失墜にもつながるため、正直に申告するのが何よりも重要です。少しでも不安や疑問がある場合は、ハローワークに相談してください。適切な手続きを踏んで、安心して失業給付を受けましょう。

アルバイトやパートに制限がある

失業保険受給中にアルバイトやパートをする場合、いくつかの制限があります。収入に制限があるため一定額を超える収入がある場合、失業保険の給付が減額されたり、支給が停止されたりします。短期的な仕事や臨時の仕事をする場合も、必ず申告が必要です。フルタイムの仕事に就くと、失業保険の受給資格を失ってしまいます

副業や自営業を始める場合も、同様に申告が必要です。制限を守らず、収入を隠すと不正受給とみなされ、罰則の対象となります。働いた日数や収入は、失業認定申告書に正確に記入しなければなりません。制限に関して最新かつ正確な情報を得たい場合は、ハローワークに直接確認しましょう。

まとめ

自己都合退職でも失業保険は受給できます。受給するには、現在失業状態で一定期間の被保険者期間が必要です。条件を満たしている人がハローワークに求職申し込みをすれば、失業保険を受給できます。自己都合退職の場合は、給付制限や給付日数、総支給額に影響があるので注意が必要です。

手続きには以下のステップがあります。

  1. 雇用保険被保険者証や離職票の取得
  2. ハローワークでの手続き
  3. 説明会参加
  4. 失業認定

不正受給のリスクやアルバイト・パートの制限にも気をつけましょう。自己都合退職後の失業保険受給は複雑な面もありますが、正しい知識と手順を押さえれば適切に利用できます。困ったときはハローワークに相談するのがおすすめです。

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