自己都合と会社都合の違いは?失業保険を受給するための手続きと注意点を解説

「会社都合退職で失業保険はもらえるのかわからない」と悩む方は多くいます。失業保険の受給条件や申請方法など、わからないことが多くて不安を感じるのも当然です。本記事では、会社都合退職の基礎知識から失業保険の受給方法、注意点まで詳しく解説します

記事を読めば、会社都合退職の際の手続きや失業保険の受給方法が明確になり、不安なく次のキャリアに進むことが可能です。会社都合退職では、失業保険の受給条件が緩くなり、給付日数も増えます。正しい知識を身に付けて、有利な退職を目指しましょう。
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目次

会社都合退職の基礎知識

会社都合退職は、従業員の意思とは関係なく会社の事情で退職することを指します。自己都合退職と異なり、会社の経営状況や組織再編が理由です。会社都合退職の特徴を詳しく見てみましょう。

会社都合退職とは会社の都合で従業員を退職させること

会社都合退職は会社の経営上の理由で従業員を退職させることです。経営悪化や事業縮小、組織再編などが主な理由です。従業員の意思に関係なく会社側から退職を求めます。解雇や希望退職、早期退職制度を通じて行われます。会社都合退職の場合、労働基準法にもとづいた手続きや補償が必要です。

不当な解雇を避けるため、会社には整理解雇の4要件を満たすことが求められます。従業員にとって不本意な退職となりますが、失業保険の受給条件は自己都合退職よりも有利になります。会社都合退職の場合、退職金の支払いや解雇予告手当の支給、正当な退職理由の説明が必要です。

従業員の権利を守るため、法律で定められた適切な手続きを踏むことが重要です。再就職支援制度を設けている企業もあり、円滑な転職活動をサポートする体制が整っています。

自己都合退職との違い

会社都合退職と自己都合退職では、退職理由や失業保険の条件に大きな違いがあります。それぞれの特徴は以下のとおりです。

項目会社都合退職自己都合退職
退職理由会社側からの申し出従業員からの申し出
失業保険の受給待機期間7日のみ待機期間7日+給付制限2か月
給付日数90〜330日90〜150日
退職金減額なし減額の可能性あり
再就職支援支援制度あり支援制度なし
会社都合退職と自己都合退職の違い

会社都合退職では解雇予告手当の支給が必要ですが、自己都合退職では必要ありません。失業保険の給付日数も会社都合退職の方が長く、最大330日まで受給できます。退職金の減額も自己都合退職と異なり、原則として行われません。ただし、会社都合退職は転職活動の際に詳しい理由を説明する必要があります。

倒産や事業縮小など、やむを得ない事情による退職であることを明確にしなければなりません。自己都合退職の場合は一身上の都合で済みますが、会社都合退職では具体的な説明が求められます。

失業保険を会社都合退職でもらえるケース

失業保険を会社都合退職でもらえるケースは以下のとおりです。

  • 会社の倒産
  • パワハラやセクハラなどのハラスメント
  • リストラや解雇
  • 賃金の不当な未払い

会社の倒産

会社が倒産する場合、失業保険を会社都合退職でもらえます。従業員の意思とは関係なく、会社の経営状態の悪化により雇用が終了するためです。倒産による退職は「特定受給資格者」として扱われ、失業保険の給付条件が優遇されます。具体的な倒産のパターンは以下のとおりです。

  • 法的破産手続きの開始
  • 会社更生法の適用申請
  • 民事再生法の適用申請
  • 事業所の閉鎖
  • 経営者の行方不明

会社財産の差し押さえや債務超過により事業継続が不可能になった場合も、倒産による退職として認められます。主要取引先の倒産による連鎖倒産や、資金繰り悪化による給与未払いなども同様です。会社が自主的に事業を停止した場合は、状況によって判断が分かれます。

倒産に該当するかどうか不明な場合は、ハローワークに相談しましょう。離職票に記載された内容や、倒産の事実を証明する書類を基に判断が行われます。

パワハラやセクハラなどのハラスメント

職場でのパワハラやセクハラにより退職を余儀なくされた場合も、会社都合退職として扱われます。上司や同僚からの執拗な嫌がらせや、性的な言動による精神的苦痛を受けた場合などが典型例です。業務上の合理的理由のない叱責や罵倒、過度な監視なども、パワハラに含まれます。

ハラスメントによる会社都合退職を認めてもらうには、具体的な証拠が必要です。会社へ相談した記録や、労働基準監督署への申告内容、医師の診断書などが有効な証拠になります。ハラスメントの事実を示すメールやメモ、録音データなども重要です。

ハラスメントにより心身の健康被害が生じた場合は、診断書や通院記録を保管しましょう。会社のハラスメント相談窓口や人事部門に相談し、改善を求めることが基本です。改善が見られない場合は、労働基準監督署や労働局に相談しましょう。相談内容や対応の記録を残しておくことで、会社都合退職の証拠として活用できます。

リストラや解雇

リストラや解雇は会社都合退職の代表的な理由の一つです。経営状況の悪化や業務縮小、組織再編などにより、会社が従業員を減らす必要がある場合に行われます。解雇には「普通解雇」と「整理解雇」があり、それぞれ異なる要件が定められています。普通解雇は能力不足や病気による就業不能の場面が典型例です。

整理解雇は以下4つの要件を満たす必要があります。

  • 人員整理の必要性
  • 解雇回避努力義務
  • 人選の合理性
  • 労働者との協議

会社が一方的に解雇を通告することは認められず、労働者の権利を守るための手続きが重要です。30日前の解雇予告か、解雇予告手当の支払いが義務付けられています。契約社員や派遣社員の場合、雇い止めも会社都合退職として扱われます。

能力不足や勤務態度の悪さを理由とした解雇の場合は、状況によって判断が分かれることもあるため注意が必要です。

賃金の不当な未払い

賃金の不当な未払いは、失業保険を会社都合退職でもらえる重要なケースです。労働者の基本的な権利である賃金の支払いが滞ることは、労働基準法違反になります。賃金の未払いが続くことで、生活に重大な支障をきたします。賃金未払いとして問題になるケースは以下のとおりです。

  • 給与の一部または全額が未払いである
  • 賃金の支払いが恒常的に遅延している
  • 残業代が適切に支払われない
  • 給与明細と実際の支給額が合わない
  • 一方的に賃金がカットされている

改善の見込みがない場合は、会社都合退職として認められます。会社の一時的な資金繰りによる支払い遅延は、状況によって判断が異なる点には注意しましょう。賃金未払いの事実を記録や資料として残しておくことが重要です。労働基準監督署やハローワークに相談し、適切な対応を取ってください。

失業保険を会社都合退職でもらうメリット

会社都合退職で失業保険を受給する場合、さまざまなメリットがあります。会社都合退職では、給付開始までの期間が短く、給付日数も長いのが特徴です。具体的なメリットを見てみましょう。

給付金を早く受給できる

給付金を早く受給できることは、会社都合退職の大きなメリットです。手続き完了から7日間の待機期間後、すぐに給付が開始されます。給付制限期間がないので、安心して求職活動に専念することが可能です。自己都合退職の場合は待機期間の後に2か月間の給付制限期間があるため、経済的な不安が大きくなります。

突然の退職で経済的に不安定な状況に陥った場合の早期受給は大きなメリットです。ただし、不正受給には厳しいペナルティがあるため、正しい手続きを踏むことが重要です。会社都合退職の要件を満たしているか確認し、適切に申請しましょう。

給付日数が長い

会社都合退職の場合、失業保険の給付日数は自己都合退職に比べて大幅に長いのが特徴です。給付日数は年齢や被保険者期間によって90〜330日まで幅広く設定されています。30歳未満で被保険者期間が1年以上の場合、90〜180日の給付が受けられます。

45歳以上65歳未満で20年以上の場合は、最長330日も給付を受けることが可能です。特定受給資格者に認定されると、給付日数が延長されます。障害者や難病患者の場合は、最大60日の給付日数の延長措置があります。給付日数が長いことで、次の仕事を慎重に選ぶことができ、希望する条件での再就職を実現しやすくなります。

ただし、再就職が決まった場合は給付が終了します。残りの給付日数に応じて再就職手当が支給される制度もあるため、早期の再就職活動をおすすめします。

失業保険を会社都合退職でもらうための手続き

会社都合退職で失業保険を受給するには、いくつかの手続きが必要です。必要書類の準備から受給開始までの流れを詳しく見てみましょう。

必要書類を準備する

失業保険の申請には、さまざまな書類が必要です。手続きをスムーズに進めるために必要な書類は、以下のとおりです。

  • 雇用保険被保険者証
  • 離職票1・2
  • 本人確認書類
  • マイナンバー確認書類
  • 通帳またはキャッシュカード

離職票は会社から発行される重要な書類です。退職理由や在職期間、賃金支払い状況などが記載されています。本人確認書類には運転免許証やマイナンバーカードが使用できます。写真付きの身分証明書がない場合は、健康保険証と住民票の組み合わせでも可能です。

通帳は本人名義のものが必要で、給付金の振込先として使用します。退職理由によっては追加の証明書類が必要です。ハラスメントや賃金未払いによる退職の場合は、事実を証明する資料を用意しましょう。

ハローワークで手続きする

失業保険を受給するための具体的な手続きの流れは以下のとおりです。

  1. 最寄りのハローワークに書類を提出
  2. 資格審査と面談の実施
  3. 受給資格の決定
  4. 失業認定申請書の作成
  5. 認定日の指定

ハローワークでは、提出書類の確認後に退職理由などの聞き取り調査が行われます。会社都合退職の場合は、事実を裏付ける資料があると手続きがスムーズです。面談では求職活動の意思や希望する仕事についても確認されます。状況によっては追加書類の提出が必要です。

受給資格が認められると、失業認定申請書の作成と認定日の指定が行われます。認定日から失業給付に関する権利が発生するため、指定された期日は必ず覚えておきましょう。

雇用保険受給者説明会に参加する

雇用保険受給説明会は、失業保険の仕組みや受給手続きについて詳しく学ぶ重要な機会です。説明会では、失業給付の受給方法や求職活動の進め方、注意点などが説明されます。説明会の内容をしっかり理解し、メモを取りながら参加することが大切です。説明会では、失業認定日や給付金の支給スケジュールなども確認できます。

不明な点があれば、その場で質問できます。説明会終了後は、必要な書類の記入や提出を確実に行いましょう。受給手続きの次のステップについても説明されるため、今後の予定を立てやすくなります。給付制限や不正受給に関する注意事項も重要な情報になるので、しっかりと確認してください。

求職活動の状況を報告する

失業保険を受給するためには、定期的な求職活動が必要です。具体的な求職活動の事例は以下のとおりです。

  • 求人への応募活動
  • 企業説明会への参加
  • 職業訓練の受講
  • ハローワークでの職業相談
  • 民間職業紹介所の利用

求職活動の報告は「失業認定申告書」に記入します。応募した企業名や説明会の参加日時、面接結果などを具体的に記録することが大切です。活動内容を証明する書類も保管しておき、求められた際にすぐ提出できるようにしましょう。オンラインでの求職活動も実績として認められます。

担当者との面談では、求職活動の進捗状況や課題を共有し、必要に応じて相談や指導を受けられます。定期的な報告と相談を通じて、効果的な求職活動を進めることが可能です。求職活動の証明が不十分な場合は給付が停止される可能性があるため、しっかりと記録を残しましょう。

失業認定を受ける

失業認定を受けるためには、4週間ごとにハローワークに出向く必要があります。認定日には失業認定申告書を提出し、求職活動の実績を報告します。失業状態が継続しているかの確認も行われ、就職の有無も申告しなければなりません。認定を受けると、次の支給日に失業給付が振り込まれます。

正当な理由なく認定日に来なかった場合、給付を受けられないため注意が必要です。認定日に行けない場合は事前に連絡をして、別の日に変更できます。病気やケガで認定日に行けない場合は、診断書を提出すれば問題ありません。

受給が開始される

失業認定を受けた後、指定された日に失業保険の受給が開始されます。最初の支払いは失業認定日から約1週間後に行われ、2回目以降は4週間ごとに支給されます。支給額は、直近6か月の平均賃金の50〜80%の範囲です。支給期間は年齢や雇用保険の加入期間によって90〜330日の間で設定されます。

受給方法は多くの場合、口座振込で行われます。求職活動の状況を確認するため、受給中も定期的なハローワークへの来所が必要です。失業給付を受けながら、希望する条件での再就職を目指せます。給付期間中に再就職が決まった場合は、残りの期間に応じて再就職手当を受け取れる可能性があります。

失業保険を会社都合退職でもらう際の注意点

失業保険を会社都合退職でもらう際の注意点は以下のとおりです。

  • 不正受給にはリスクがある
  • 受給中にアルバイトや副業はできない

不正受給にはリスクがある

不正受給は重大な違反行為です。虚偽の申告や書類の偽造によって失業保険を不正に受給すると、深刻なペナルティが課されます。受給した給付金を全額返還しなければならず、詐欺罪として刑事罰を受ける可能性もあります。行政処分として最大3年間の給付制限が課され、本当に失業した際に給付を受けられません。

雇用保険の加入記録が抹消される可能性もあり、将来の失業給付にも影響を及ぼします。不正受給の事実が公表されると社会的信用を失い、再就職への道は絶望的です。正直に申告し、適切な手続きを踏んでください。不明な点がある場合は、必ずハローワークに確認しましょう。

受給中にアルバイトや副業はできない

失業保険の受給中は、原則としてアルバイトや副業を行えません。収入を得る活動が制限される主な理由は以下のとおりです。

  • 失業状態の確認が困難
  • 求職活動への支障
  • 不正受給のリスク
  • 給付額の調整の複雑化
  • 再就職の遅延

しかし、短期のアルバイトなど一部の条件を満たせば認められる場合もあります。条件を満たす場合でも、必ずハローワークへの報告が必要です。報告せずに就労すると不正受給とみなされる可能性があるため注意しましょう。収入が一定額を超えると失業給付が減額または停止される場合もあります。

受給資格を維持するためには、求職活動の継続が必要不可欠です。アルバイトや副業を考える前に、まずはハローワークに相談してください。

失業保険を会社都合退職でもらう際によくある質問

失業保険を会社都合退職でもらう際によくある質問に回答しました。自己都合退職を会社都合退職に変更したい方や、会社から「自己都合退職にしてほしい」と言われた際の対処法を解説します。

自己都合退職を会社都合退職に変更できる?

自己都合退職を会社都合退職に変更することは、原則として難しいです。しかし、実際の退職理由が会社都合だった場合は変更できます。会社が経営悪化を理由に退職を促したにもかかわらず、自己都合退職として処理していた場合などが該当します。

変更には客観的な証拠が必要です。退職を勧められた際のメールや音声データ、給与未払いの記録など、会社都合であることを示す資料が必須となります。労働組合や社会保険労務士に相談し、適切なアドバイスを受けましょう。会社都合への変更手続きには期限があるため、早めの対応が重要です。

変更が認められなくても「特定理由離職者」として扱われる可能性もあります。状況に応じて最適な選択肢を見つけてください。

会社から「自己都合退職にしてほしい」と言われたら?

会社から自己都合退職を求められた場合の対応方法は以下のとおりです。

  • 要請内容を記録に残す
  • 専門家に相談する
  • 退職条件の交渉を行う
  • 労働組合に相談する
  • 合意退職を提案する

会社都合を自己都合に変更することで、会社は助成金の受給や雇用保険料率の上昇を回避できます。しかし、労働者にとっては失業保険の受給条件が不利になるため、安易に応じるべきではありません。交渉の過程で退職金の増額や有給休暇の買い取り、再就職支援の提供といった条件を引き出せる可能性もあります。

自己都合退職を求められた場合は、専門家に相談しながら適切な対応を取りましょう。会話の録音やメールの保存など、記録を残すことも重要です。

まとめ

会社都合退職は、従業員の意思とは関係なく会社の事情で退職することです。失業保険の受給では、待機期間7日後から給付が始まり、最大330日まで受給できます。倒産やリストラ、賃金未払いなど、さまざまなケースで会社都合退職が認められます。

不正受給を避け、適切な手続きを踏むことで、安定した受給が可能です。正しい知識を持って手続きを進め、次のキャリアに向けて準備を整えましょう。

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