失業保険の受給条件とは?3つの退職理由別に解説【手続きの流れと注意点】

失業は誰にでも起こり得ます。失業保険は、失業時の生活を支える重要な制度ですが、受給条件や手続きについてあまり知られていないのが現状です。本記事では、失業保険の受給条件や手続きの流れ、注意点などを詳しく解説します。記事を読めば、失業保険の受給条件や受給手順がわかります。
» 退職後に必要な手続きとは?漏れなく効率的に進める手順を解説

目次

失業保険の受給条件

失業保険の受給には、条件を満たすことが大切です。主な条件は以下のとおりです。

  • 失業している
  • 雇用保険の被保険者期間が一定以上ある
  • ハローワークに求職を申し込んでいる

失業中の生活を支える大切な制度なので、十分理解しましょう。

失業している

失業保険の受給条件に重要な失業の定義は「仕事を探す意思と能力がありながら、収入を得る仕事に就いていない状態」です。失業状態の特徴は以下のとおりです。

  • パート・アルバイトをしている場合の週の所定労働時間が20時間未満であること
  • 事業を営んでいないこと
  • 学生でないこと
  • 家事専業でないこと
  • 定年退職後に再就職の意思があること

失業状態の証明には、定期的にハローワークで認定を受ける必要があります。健康上の理由による就労困難の場合は、失業者認定から除外されます。失業保険の受給を希望する場合は、自分が「失業している」状態かを考慮し、適切な申請をしましょう。

雇用保険の被保険者期間が一定以上ある

雇用保険の被保険者期間が一定以上あることが、失業保険を受給するための重要な条件です。離職日以前の2年間に被保険者期間が通算12か月以上必要です。被保険者期間とは、実際に働いた期間ではなく、雇用保険に加入していた期間を指します。

加入対象は、週20時間以上、31日以上雇用見込みがある場合なので、パートタイム労働者でも条件を満たせば対象です。被保険者期間には以下の特徴があります。

  • 複数事業所での勤務期間合算ができる
  • 育児・介護休業期間もカウントできる
  • 雇用保険被保険者証での確認ができる

離職理由によっては条件が緩和されることもあり、条件を満たせば、失業保険の受給資格を得られる可能性が高まります。

ハローワークに求職を申し込んでいる

ハローワークに求職を申し込むことも、失業保険を受給するための条件です。求職申し込みをして、就職活動への意欲を示しましょう。求職申し込みをすると、職業相談や積極的な就職活動、定期的な求職活動状況の報告などが求められます。求職申し込み後は7日間の待機期間があり、失業保険の給付は行われません。

待機期間終了後も、定期的にハローワークに通う必要があります。近年ではオンラインでの求職申し込みが可能になり、手続きのしやすさはありますが、職業相談や求職活動報告は必要です。就職の意思と能力があり、ハローワークが紹介する職業に就く意思を示すことが重要です。

【退職理由別】失業保険の受給条件

失業保険の受給条件は退職理由によって異なり、以下3つに分類されます。

  • 一般の離職者
  • 特定受給資格者
  • 特定理由離職者

被保険者期間や給付制限期間、給付内容に違いがあるため、自分がどのカテゴリーに該当するか確認しましょう。65歳以上の離職者は高年齢求職者給付金の対象である点にも注意が必要です。

一般の離職者

自己都合退職の場合、一般の離職者は2か月の給付制限期間があります。受給資格を満たしていれば、給付制限期間の後に失業保険の受給が可能です。給付日数は、被保険者期間によります。10年以上20年未満の場合は90日、20年以上の場合は120日の給付です。
» 自己都合退職でも失業保険を受給する方法を解説

45歳以上65歳未満の長期加入者は、給付日数が延長されますが、高年齢求職者給付金の対象にはなりません。一般の離職者でも、再就職手当や教育訓練給付金などの制度を利用でき、新しい仕事に就く際や、スキルアップの際に役立ちます。

特定受給資格者

特定受給資格者とは、会社都合で離職した人のことです。会社都合とは、以下のとおりです。
» 会社都合退職の基礎知識から失業保険の受給方法と注意点を解説

  • 倒産
  • 解雇
  • 雇止め
  • 期間の定めのある労働契約の非更新
  • 事業主の勧奨
  • 退職勧奨
  • 65歳未満の定年

会社都合で離職した場合、一般の離職者よりも手厚い失業保険の給付を受けられます。特定受給資格者には、65歳以上の定年が定められていた場合の定年退職者も含まれます。65歳以上の定年退職者は一般的な失業保険の対象外なので注意が必要です。

障害者の就労継続支援A型事業所の利用者も、一定の条件を満たせば特定受給資格者です。離職前1年間に労働保険料が納付された期間が6か月以上ある場合が該当します。特定受給資格者は、失業保険の受給期間や給付日数が一般の離職者よりも長く、余裕を持って再就職活動に取り組めます。

特定理由離職者

特定理由離職者は、一般の離職者と特定受給資格者の中間的な扱いを受ける離職者です。失業保険の受給において一定の優遇措置を受けられます。特定理由離職者に該当する主な離職理由は以下のとおりです。

  • 本人の責めによらない解雇
  • 事業主の勧奨による退職
  • 事業所の移転や通勤困難
  • 結婚、出産、育児、介護
  • 65歳未満の定年
  • 契約期間満了

特定理由離職者の失業保険受給には、一般離職者と同じ被保険者期間が必要です。給付制限期間は3か月で、給付日数は会社都合退職者と同じ扱いを受けられます。特定理由離職者は一般離職者よりも優遇された条件で失業保険を受給できるため、該当する可能性がある場合は確認しましょう。

【退職理由別】失業保険の受給期間と給付日数

失業保険の受給期間と給付日数は、退職理由によって異なり、以下の2つに分類されます。

  • 自己都合退職者
  • 会社都合退職者・特定理由離職者

退職の状況に合わせて適切な手続きを行いましょう。

自己都合退職者

自己都合で退職した場合の失業保険の受給期間は、会社都合の退職者と比べて短く、原則3か月(90日)です。65歳以上の場合は一律30日です。被保険者期間が長いほど給付日数が増加します。最長給付日数は150日(10年以上20年未満の場合)で、20年以上の場合は特定受給資格者と同日数です。

自己都合退職者には7日間の待機期間の後、2か月の給付制限期間があり、期間中は失業給付を受けられません。特定の理由がある以下の場合は、給付制限期間が短縮される可能性もあります。

  • 家族の介護
  • 結婚・出産・育児
  • 本人の病気やけが

自己都合退職者でも、再就職手当の対象です。技能習得手当や寄宿手当も受給できます。受給資格の有効期間は離職日の翌日から1年間です。期間内に手続きを行わないと、失業給付を受給できない可能性があるため注意しましょう。

会社都合退職者・特定理由離職者

会社都合退職者・特定理由離職者の失業保険の受給期間と給付日数は、一般の離職者よりも手厚い保護があります。自己都合ではなく会社の事情で退職を余儀なくされた人への配慮です。被保険者期間に応じて90〜360日の給付日数が設定されています。

45歳以上65歳未満の人は最長330日、65歳以上の人は最長240日の給付を受けられます。再就職に時間がかかる可能性が高い年齢層への支援策です。会社都合退職者と特定理由離職者には以下の特徴があります。

  • 失業保険の受給開始が早いこと
  • 給付制限期間がないこと
  • 追加給付を受けられる可能性があること

失業保険の受給開始は離職日の翌日からで、給付制限期間がなく待機期間のみです。再就職手当や教育訓練給付金などの追加給付を受けられる可能性もあるため確認しましょう。

失業保険の受給金額

失業保険の受給金額は、離職前の賃金や年齢によって決まります。以下3つの重要な要素について解説します。
» 失業保険の受給開始時期や給付期間などをわかりやすく解説!

  • 賃金日額の上限と下限
  • 基本手当日額の上限と下限
  • 年齢別の基本手当日額

賃金日額の上限と下限

失業保険の賃金日額には上限と下限が設けられています。受給者の生活保障と制度の公平性を両立させるためです。

賃金日額の上限額は年齢別に設定されています。

  • 29歳以下:13,890円
  • 30歳~44歳:15,430円
  • 45歳~59歳:16,980円
  • 60歳~64歳:16,210円

賃金日額の下限額はすべての年齢で2,746円です。

年齢や状況に応じて適切な金額が設定されており、受給者の生活を支える仕組みです。

基本手当日額の上限と下限

基本手当日額の上限と下限は、失業保険の受給金額を決めるために重要です。賃金日額は、離職前6か月の賃金総額を180で割った金額です。基本手当日額は、賃金日額の50〜80%に設定されており、以下の特徴があります。

  • 年齢や賃金日額による給付率変動がある
  • 60〜64歳の特例がある
  • 賃金日額の上限と下限がある

基本手当日額の上限額は年齢によって異なり、6,945〜7,294円と決められています。下限額はすべての年齢で2,196円です。受給額は基本手当日額と賃金日額から計算されます。

年齢別の基本手当日額

基本手当日額には上限と下限があり、上限額は年齢層によって異なります。年齢に応じて生活費や家族の扶養などの事情が異なるためです。年齢別の基本手当日額の上限額は、以下のとおり設定されています。

  • 29歳以下:6,945円
  • 30歳~44歳:7,715円
  • 45歳~59歳:8,490円
  • 60歳~64歳:7,294円

下限額は全年齢で一律で、一定の生活保障が確保される仕組みです。

失業保険の受給手続きの流れ

失業保険の受給手続きは、以下の手順で行います。
» 失業保険のもらい方や受給条件、金額の計算方法を徹底解説

  1. 必要書類を準備する
  2. ハローワークで手続きする
  3. 雇用保険受給者説明会に参加する
  4. 失業認定を受ける
  5. 受給が開始される

必要書類を準備する

失業保険の受給手続きを始める前に、必要な書類を準備しましょう。以下のものを用意すれば、円滑な手続きが可能です。

  • 離職票
  • 本人確認書類
  • 写真2枚
  • 印鑑
  • 預金通帳またはキャッシュカード
  • マイナンバー確認書類
  • 雇用保険被保険者証
  • 退職証明書

離職票がない場合は退職証明書で代用できます。本人確認書類とマイナンバー確認書類は別のものが必要です。写真は最近撮影したものを用意しましょう。

ハローワークで手続きする

ハローワークで手続きをする際は、住所地を管轄するハローワークに行く必要があります。手続きの流れは以下のとおりです。

  1. 求職申込書と雇用保険受給資格者証を提出する
  2. 本人確認書類を提示する
  3. 失業の認定日を決定する
  4. 雇用保険説明会の日程を確認する
  5. 求職活動の状況報告方法を確認する

手続き完了の後、受給資格決定通知書を受け取り、雇用保険受給資格者証に認定日などを記入してもらいます。失業認定申告書を受け取り、次回の来所日を確認してください。疑問点や不明点は職員に質問できます。

雇用保険受給者説明会に参加する

雇用保険受給者説明会に参加することで、失業保険の仕組みや受給手続きについて詳しく学べます。説明会で解説される内容は、以下のとおりです。

  • 失業保険の仕組み
  • 受給資格の確認方法
  • 給付金額の計算方法
  • 求職活動の進め方
  • 失業認定申告書の記入方法

不正受給の防止や受給中の注意事項などの説明と質疑応答の時間もあり、個別の疑問点を解消できます。説明会への参加により、失業保険の受給手続きを円滑に進められます。出席しなければ受給手続きが進められない場合もあるので注意しましょう。説明会終了後は、次回の失業認定日が指定されます。

必要に応じて個別相談の機会もあるので、積極的に利用しましょう。

失業認定を受ける

失業認定を受けるには、ハローワークに4週間に1回程度出頭することが必要不可欠です。ハローワークでは、定期的に以下の手順で失業状態を確認し、適切な支援を行います。

  1. 失業認定申告書の提出
  2. 求職活動実績の報告
  3. 就職の有無や収入状況の申告

認定日には基本手当が支給されますが、正当な理由なく欠席すると、次回まで支給が延期されます。3回連続で欠席すると受給権が消滅するので注意しましょう。病気やけがで認定日に来られない場合は、事前の連絡が必要です。失業認定の過程では、求職活動の指導や支援も受けられます。

受給が開始される

受給はすぐに開始されず、失業認定日から7日間の待期期間中は給付が行われません。自己都合退職などの場合には、待期期間終了後、原則として7日間の給付制限期間があります。給付制限期間が終了した後、最初の失業認定日に基本手当が支給されます。指定の銀行口座への振り込みです。

受給期間中に定期的な失業認定を受けることと、就職活動状況を報告することは必須です。怠ると、受給が停止される可能性があるため注意しましょう。

失業保険の受給条件に関する注意点

失業保険の受給には、以下の注意点があります。

  • 不正受給にはリスクがある
  • 受給中のアルバイトやパートに制限がある

不正受給にはリスクがある

不正受給は危険な行為です。虚偽の申告や不正な手段での受給は違法行為となり、厳しい罰則が科される可能性があります。不正受給が発覚した場合のリスクは、以下のとおりです。

  • 不正受給額の最大2倍の金額の納付が命じられる
  • 将来の失業給付が受けられなくなる可能性がある
  • 不正受給の事実が公表される場合がある

雇用保険法違反として刑事罰の対象となる場合もあります。不正受給は発覚するリスクが高く、長期的な不利益が大きいため、避けるべきです。正しく申告し、適切に手続きしましょう。

受給中のアルバイト・パートに制限がある

失業保険を受給中にアルバイトやパートをする場合、制限があります。収入額に応じて給付が減額されるのが主な制限です。アルバイトやパートの収入が、基本手当日額の13倍を超えた月の失業保険は支給されません。収入が少額であっても申告は必須です。就労した日数や時間により、失業認定を受けられない場合もあります。

短期アルバイトは失業保険の受給資格に影響しませんが、長期アルバイトは新たな雇用保険の被保険者となる可能性があります。自営業を始める場合は受給資格を失う可能性があり、副業や在宅ワークも収入として申告が必要です。制限は、失業保険の本来の目的である「求職活動中の生活保障」を維持するためのものです。

アルバイトやパートを考えている場合は、事前にハローワークで詳しい条件を確認しましょう。

まとめ

失業保険を受給するには、条件があります。主に、失業していることと雇用保険の被保険者期間が一定以上あること、ハローワークに求職申し込みをしていることです。退職理由によって受給条件や期間、給付日数が変わります。受給金額は賃金日額と基本手当日額に基づいて計算され、年齢によって上限が設定されています。

失業保険は、必要書類の準備やハローワークでの手続き、説明会参加、失業認定の流れを経て受給開始です。不正受給には罰則があるため注意が必要です。受給中のアルバイトやパートにも制限があります。失業保険を適切に利用するためには、正確な情報の把握と適切な手続きが大切です。

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