個人事業主として独立する際、行政手続きの複雑さに戸惑う方は多くいます。しかし、事業をスムーズに進めるためには、開業届や青色申告などの手続きは欠かせません。この記事では、開業届と青色申告承認申請書を提出するメリットやデメリット、手続きの方法を解説します。
記事を読めば、初めて個人事業主として独立する方でも、開業届と青色申告承認申請書の手続きをスムーズに進められます。開業届と青色申告承認申請書は、税金対策や事業運営に大きな影響を及ぼす書類です。開業届と青色申告について正しい手続きを行い、スムーズに事業をスタートさせましょう。
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開業届と青色申告承認申請書を提出するメリット

開業届と青色申告承認申請書を提出するメリットは、以下のとおりです。
- 青色申告特別控除を受けられる
- 屋号で銀行口座を開設できる
- 社会的信用を得られる
青色申告特別控除を受けられる
青色申告承認申請書を提出すると、確定申告で青色申告特別控除を受けられます。青色申告では最大65万円の青色申告特別控除が受けられるため、課税所得を減らし納税額の軽減が可能です。青色申告特別控除を受けるには条件があり、控除額によって必要な手続きが異なります。
65万円の青色申告特別控除を受けたい場合は、e-Taxによる青色申告特別控除の申告と電子帳簿の保存が必要です。55万円の青色申告特別控除の場合は、電子帳簿の保存は不要です。青色申告は白色申告と比べると手続きはやや複雑ですが、受けられる税制上の優遇措置は大幅に拡充されています。
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屋号で銀行口座を開設できる

個人事業主が開業届を出すと、屋号(事業名)を使用した銀行口座を開設できます。屋号付きの銀行口座の開設には、開業届の控えが必要です。屋号付きの銀行口座を持つと、事業資金と個人資金を明確に区別できます。
取引先からの入金や経費の支出を事業名義で管理できるため、銀行口座を分けると確定申告時の帳簿作成も簡単です。屋号付き銀行口座の有無は、事業の信用度にも関わります。開設できる銀行口座は普通預金口座と当座預金口座であり、初めて独立する方には普通預金口座が推奨されています。
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社会的信用を得られる
開業届を提出すると公的に事業者として認められ、以下の効果が得られます。
- 名刺やホームページに屋号を記載できる
- 個人事業主であることを証明できる
- クライアントからの信頼を獲得できる
- 事業者としての実績を構築できる
開業届を提出していると、事業拡大の際にも取引先の開拓がスムーズになります。事業専用クレジットカードの申請や銀行融資審査においてプラスの評価を得られるなど、開業届は金銭面のメリットもあります。
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開業届と青色申告承認申請書を提出するデメリット

開業届と青色申告承認申請書を提出するデメリットは、以下のとおりです。
- 健康保険の扶養に入れなくなる
- 失業給付を受けられない
- 帳簿を付ける必要がある
健康保険の扶養に入れなくなる
配偶者などの健康保険の扶養から外れる収入額は、年収130万円以上(または月収108,334円以上)が一般的です。開業届を提出して個人事業主になると、収入基準に達していなくても健康保険の扶養から外れる可能性があります。健康保険の扶養から外れると、以下の対応が求められます。
- 国民健康保険への加入
- 保険料の自己負担
- 収入に応じた保険料の支払い
健康保険の切り替え手続きは、扶養から外れてから14日以内に行う必要があります。保険の切り替え手続きが遅れると、医療費が全額自己負担となる可能性もあるため、期限は守りましょう。健康保険料や国民年金保険料の支払いは、開業初期の大きな負担となるため注意してください。
収入が見込めない場合でも、事業計画によっては健康保険の扶養から外されることがあります。開業届を提出する前に、扶養条件について加入している健康保険組合や年金事務所に確認しておくと安心です。
失業給付を受けられない

開業届を提出すると、雇用保険の失業給付を受け取れなくなります。失業給付は失業中の方に支給される制度ですが、開業届を提出すると自営業者として就業しているとみなされるためです。失業給付を受給中に開業を検討している場合は、開業届の提出タイミングに十分注意する必要があります。
帳簿を付ける必要がある
青色申告承認申請書を提出すると青色申告が可能になり、日常の取引を帳簿に正確に記録することが求められます。帳簿付けは確定申告や税務管理に必要な作業であり、青色申告では複式簿記による記帳が義務付けられています。帳簿や領収書などの証憑書類は、法律により7年間の保存が必要です。
帳簿付けが不十分だと、確定申告や税務調査で問題が発生し、青色申告特別控除を受けられなくなるリスクもあります。
» 副業の確定申告のやり方を解説!
開業届と青色申告承認申請書の書き方

開業届と青色申告承認申請書について以下を解説します。
- 書類のダウンロード先
- 開業届の書き方
- 青色申告承認申請書の書き方
書類のダウンロード先
開業届と青色申告承認申請書は、国税庁のホームページからダウンロードできます。開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)は「確定申告書等作成コーナー」から取得可能です。青色申告承認申請書は「税務署で配布している申請書・届出書等」のページからダウンロードできます。
国税庁のホームページからダウンロードしたPDFファイルは、正式な書類として認められています。開業届や青色申告承認申請書をインターネット上でダウンロードできない場合は、最寄りの税務署窓口で受け取ることも可能です。
開業届の書き方

開業届の記入のポイントは以下のとおりです。
- 納税地欄:自宅の住所を記入
- 所轄税務署長欄:管轄の税務署名を記入
- 提出年月日:実際に提出する日付を記入
- 届出の区分:「開業」にチェック
- 屋号と氏名:フルネームで記入
- 生年月日と性別:正確に記入
- 職業欄:具体的な事業内容を記入(例:ウェブデザイン業)
- 開業日:実際に事業を開始した日付を正確に記入
- 所得の種類:「事業」にチェック
- 開業の事由欄:「新規開業」など簡潔な理由を記載
- 事業所の所在地:実際に事業を行う場所の住所を記入
- 連絡先:事業用の電話番号を記入
青色申告を行う予定がある場合は、関連する項目にもチェックを入れます。開業届はマイナンバー(個人番号)の記入も忘れずに行いましょう。
» 開業届の正しい書き方と提出方法を解説
青色申告承認申請書の書き方
青色申告承認申請書を記入する際は、申請者の氏名や住所、事業所等の情報を正確に記入しましょう。業種や開業日の記載も必要です。帳簿の作成方法は、複式簿記と簡易簿記の2種類から選びます。複式簿記を選択した場合は65万円の青色申告特別控除が、簡易簿記の場合は55万円の青色申告特別控除が適用されます。
青色申告の節税効果を最大限に活用したい場合は、複式簿記を選択するのが適切です。青色事業専従者給与に関する事項がある場合は、該当箇所の記載も忘れずに行いましょう。
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開業届と青色申告承認申請書の提出方法

開業届と青色申告承認申請書の提出方法について、以下の項目を解説します。
- 提出期限
- 提出先
- 提出方法
提出期限
開業届と青色申告承認申請書は提出期限が定められています。開業届は開業日から1か月以内に提出する必要があります。開業届は提出期限を過ぎた場合、税務署から指摘を受ける可能性があるため注意しましょう。青色申告承認申請書の提出期限は、原則として開業日から2か月以内です。
1月1~15日の間に開業した場合は、開業した年の3月15日までに青色申告承認申請書を提出しましょう。提出期限を過ぎると、青色申告特別控除を受けられなくなる可能性があります。
提出先

開業届と青色申告承認申請書は、事業所の所在地を管轄する税務署へ提出します。自宅を事業所として使用する場合は、住所地を管轄する税務署が提出先です。最寄りの税務署が不明な場合は、国税庁のホームページにある「税務署の所在地等」から検索できます。
提出方法
開業届と青色申告承認申請書の提出方法は、以下のとおりです。
- 税務署窓口での提出
- 本人確認書類を持参し、税務署窓口で直接提出します。
- 郵送での提出
- 開業届と青色申告承認申請書の控えの返送を希望する場合は、切手を貼った返信用封筒の同封が必要です。
- e-Tax(電子申告)を利用した提出
- 自宅やオフィスからインターネットを通じて、開業届と青色申告承認申請書の提出ができます。
複数の事業所を持っている場合は、主たる事業所を管轄する税務署に提出する必要があります。
» 個人事業主の開業届の記入方法と提出手順を徹底解説!
» 開業届をオンラインで提出する方法を徹底解説!
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開業届と青色申告承認申請書を提出する際の注意点

開業届と青色申告承認申請書を提出する際の注意点は、以下のとおりです。
- 書類の控えを保管する
- 関連書類も忘れずに提出する
書類の控えを保管する
提出した開業届と青色申告承認申請書の控えには受付印が押されているため、大切に保管しましょう。税務調査が入った際に、開業届と青色申告承認申請書の控えは提出済みであることの証明となります。開業届と青色申告承認申請書の控えは7年以上の保管が必要なため、専用ファイルやデジタルデータで保存しておくと安心です。
開業届と青色申告承認申請書の控えは、確定申告書や帳簿とともに管理しましょう。開業届と青色申告承認申請書の控えを紛失した場合は、最寄りの税務署で再発行が可能です。
関連書類も忘れずに提出する
開業届と青色申告承認申請書を提出する際に、添付すべき主な関連書類は以下のとおりです。
- 事業概況書
- 帳簿組織等の概要書
- マイナンバーの確認書類
- 本人確認書類
- 屋号確認書類
- 許認可証のコピー
- 共同経営者の身分証明書
開業届と青色申告承認申請書をe-Taxで電子申請する場合は、電子証明書を事前に取得しておく必要があります。開業届や青色申告承認申請書の提出時に求められる書類は、税務署によって異なる場合があるため事前に確認しましょう。
開業届と青色申告承認申請書の提出に関するよくある質問

開業届と青色申告承認申請書の提出に関して、よくある質問は以下のとおりです。
- 開業届を出さないとどうなる?
- 青色申告をするには開業届の提出が必要?
- 開業届の開業日は未来の日付にできる?
開業届を出さないとどうなる?
開業届の提出は法的義務ではないため、罰則はありません。ただし、開業届の有無に関わらず所得税の申告と納税の義務は発生します。開業届を出さない場合のデメリットは、以下のとおりです。
- 青色申告による特別控除が受けられない
- 赤字の繰越控除が受けられない
- 屋号での銀行口座開設ができない
- 事業用クレジットカードが作れない
- 補助金や助成金が受けられない
- 取引先からの信用が得られない
ビジネスを本格的に展開する予定がある場合は、開業届の提出が重要です。開業届は後日提出することも可能ですが、青色申告承認申請書には提出期限が定められているため注意が必要です。
青色申告をするには開業届の提出が必要?

青色申告を行うために、開業届の提出は必須です。青色申告に必要なのは、青色申告承認申請書を期日までに提出することです。青色申告承認申請書を提出しないと、青色申告特別控除が受けられません。開業届と青色申告承認申請書は、同時に提出されることが一般的です。
開業届を同時に提出すると確定申告や青色申告特別控除の申請、必要書類のやりとりがスムーズになります。
開業届の開業日は未来の日付にできる?
開業届の開業日には、原則として未来の日付を記入できません。実際に事業を開始した日を記入するのが適切です。開業届に記載する「事業を始めた日」には、事務所や店舗の契約、事業用備品の購入など開業準備にあたる行為も含まれます。
未来の日付で開業届を提出しようとすると、税務署で受理されない可能性があります。仮に開業届に受理された場合でも、後に税務上のトラブルに発展する恐れがあるため注意が必要です。虚偽の開業日を開業届に記載すると、税務調査などで問題になる可能性もあります。
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まとめ

開業届と青色申告承認申請書の提出は、フリーランスや個人事業主として活動するうえで重要な手続きです。青色申告承認申請書を提出すれば、青色申告で最大65万円の特別控除が受けられます。開業届を提出すると屋号で銀行口座を開設できるようになり、社会的信用も向上します。
開業届を提出すると健康保険の扶養から外れ、失業給付が受けられなくなる点に注意しましょう。青色申告承認申請書を提出して青色申告を行う場合は、帳簿付けの義務が生じます。開業届は開業日から1か月以内、青色申告承認申請書は開業日から2か月以内または3月15日までに提出してください。
開業届や青色申告承認申請書の控えは、大切に保管しておきましょう。開業届の提出自体は法的義務ではありませんが、青色申告をするために必要な手続きです。
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