開業届を出すデメリット|提出する前に知っておきたい対処法と注意点

副業やフリーランスを始めたとき、開業届を出すか悩む人は多い傾向です。開業届を出さなかった場合のデメリットに不安を感じるケースもあります。この記事では、開業届を出すメリットとデメリット、開業届を出す判断基準を解説します。開業届を出す際のデメリットを理解し、最適な判断をしましょう。

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目次

開業届の基礎知識

以下に開業届の基礎知識を解説します。

  • 開業届とは事業を始めたことを税務署に届け出る書類
  • 開業届の提出義務と罰則
  • 開業届の提出期限

開業届とは事業を始めたことを税務署に届け出る書類

開業届は、個人事業主として事業を始めたことを税務署に届け出る書類です。正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」で、早めの提出が望まれます。提出先は、事業所や自宅の住所を管轄する税務署です。開業届の出し方は、税務署への持参や郵送、e-Taxによるオンライン提出から選べます。

開業届の提出に費用はかかりません。開業届に記入する情報は以下のとおりです。

  • 屋号
  • 事業内容
  • 開業日
  • 事業所の住所

事業の規模や収入に関係なく、副業を始める場合でも開業届は提出できます

開業届の提出義務と罰則

個人事業主にとって、法律上は提出義務がありますが、提出が遅れても罰則はありません。開業届を出していないと、青色申告の特典や事業者向け支援制度を利用できないデメリットがあります。

開業届の提出期限

開業届は、法律で期限が決まっており、事業を始めた日から1か月以内に提出する必要があります。開業日は、売上が発生した日ではなく、事業のために初めて支出や契約を行った日を指します。事務所を借りた日や事業用備品を購入した日などを参考にし、開業日を記載しましょう。

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開業届を出すデメリット

開業届を出すデメリットは以下のとおりです。

  • 記帳の義務が発生する
  • 失業保険がもらえなくなる
  • 社会保険の扶養から外れる必要がある
  • 確定申告の手間が増える

記帳の義務が発生する

開業届を出すと事業主に記帳義務が発生し、確定申告や税務調査の負担が増えます。記帳義務とは、事業主が取引内容を帳簿に記録し、管理することを指します。記帳に必要な項目は以下のとおりです。

  • 収入の記録
  • 経費の記録
  • 資産・負債の状況
  • 事業用現金・預金の動き

取引に関する領収書やレシートなどの証拠書類は、7年間事業主が保存する義務があります。青色申告を選ぶ場合は、複式簿記による記帳が求められます。

失業保険がもらえなくなる

開業届を出すと、事業を開始したと見なされるため、失業保険(雇用保険の失業給付)を受け取れません。開業届を出すと「事業を開始した」とみなされ、失業状態ではなくなります。事業主になった時点で受給資格を失い、実際の収入に関係なく、失業給付は打ち切られるため注意してください。

失業保険を受給している人は、受給が終了してから開業届を出すのが基本です。開業届を出していなくても、実態として事業活動が認められれば給付は停止されます。自営業のために準備や営業活動をしていると見なされた場合も、失業状態とは認められません。

求職者または失業保険の受給者は、ハローワークに対して事業開始を正直に申告する義務があります。失業保険を不正に受給した場合、給付金の返還やペナルティが科される可能性があるため注意が必要です。
» 失業保険のもらい方や受給条件、金額の計算方法を徹底解説

社会保険の扶養から外れる必要がある

開業届を出して収入が増えると、社会保険の扶養から外れなければいけません。扶養から外れると国民健康保険と国民年金に加入しなければならず、経済的な負担が増えます。以下の金額を超えると扶養資格を失います。

  • 健康保険の扶養は年収130万円(月収約10万8,000円)を超えた場合
  • 国民年金の第3号被保険者は年収106万円を超えた場合

国民健康保険料は収入や住んでいる地域によって異なりますが、月額5,000~15,000円程度かかるのが一般的です。国民年金保険料は、2023年度時点で月額16,610円です。社会保険の扶養から外れることで、年間約20万円の追加支出が発生する可能性があります。

開業初年度で収入が少ない場合は、国民健康保険料の減免制度を利用できる場合があるため、確認してください。

確定申告の手間が増える

開業届を出すと、確定申告の義務が生じます。確定申告で必要な作業は以下のとおりです。

  • 収入と経費の記録
  • 帳簿の作成と保存
  • 確定申告書類の作成
  • 申告と納税

確定申告では、年間の収入や経費を正確に記録・計算し、申告書類を作成して税務署に出す必要があります。確定申告を怠ると、事業者に対して加算税や延滞税が課されるリスクがあります。
» 初めてでも安心!確定申告の書き方完全ガイド

開業届を出さないデメリット

開業届を出さないデメリットは以下のとおりです。

  • 青色申告で最大65万円の控除が受けられない
  • 屋号名義の銀行口座が開設できない
  • クレジットカードを作れない
  • 小規模企業共済に加入できない
  • 補助金・助成金の申請ができない
  • 家族への給与を経費にできない
  • 3年間の赤字繰越しができない

青色申告で最大65万円の控除が受けられない

開業届を出さないと、青色申告による最大65万円の控除が受けられません。白色申告との控除額の差は55万円になり、所得税や住民税の負担が大きくなります。青色申告の65万円控除を受けるための条件は以下のとおりです。

  • 電子申告(e-Tax)の利用
  • 複式簿記による記帳
  • 期限内の書類提出

簡易帳簿で申告すると控除は10万円にとどまります。節税効果を得るには、複式簿記での記帳が必須です。青色申告は控除以外にも、減価償却資産の特例や家族への給与の経費計上、赤字の3年繰越しなどのメリットがあります。青色申告は事業拡大とともに節税効果も大きくなります。
» 開業届と青色申告は必須?手続きと注意点解説

屋号名義の銀行口座が開設できない

開業届を出していない場合、屋号名義の銀行口座を開設できません。開業届がないと個人名義の口座しか利用できず、事業収入と個人収入が混在するため経理が煩雑です。

取引先に対して個人名義の口座しか提示できないと、信用が低下するリスクもあります。税務調査においても、事業用資金と個人資金を明確に区別できないと、説明を求められる場面が増える可能性があります。

将来的にフリーランスから法人化を目指す場合も、事業専用口座の実績がないと、継続性や安定性を証明するのが困難です。
» 個人事業主が事業用口座を持つべき理由を解説!

クレジットカードを作れない

開業届を出していないと、個人事業主向けのクレジットカードを作成できません。個人事業主であることを公的に証明できないためです。開業届を出していない場合に起こる問題点は以下のとおりです。

  • 事業用の法人カードを作れない
  • 個人事業主向けビジネスカードを作れない
  • カード審査で不利になる
  • 事業実績や収入を証明できない

多くのカード会社では、事業用カードの申し込みに開業届の提出が必要です。ビジネスカードは、経費管理や節税に役立つ機能が備わっているため、利用できないと事業運営にとって損失につながります。事業規模が拡大すると、高額与信枠の審査にも不利になります。
» 個人事業主が事業用クレジットカードを持つメリット・デメリット

小規模企業共済に加入できない

小規模企業共済は、個人事業主や中小企業の経営者向けの退職金制度です。開業届を出していない場合、正式な事業者と認められず、小規模企業共済に加入できません。小規模企業共済に加入できないと、以下の不利益が生じます。

  • 退職金制度を活用できない
  • 掛金が所得控除できない
  • 事業資金の貸付制度を利用できない
  • 将来の資金計画に支障が出る

小規模企業共済は、月1,000~70,000円まで掛金を自由に設定でき、掛金全額が所得控除の対象となります。開業届を出し、小規模企業共済を活用することで節税効果を期待できます。共済金は退職時や廃業時に受け取り、老後資金に活用可能です。

補助金・助成金の申請ができない

開業届を出していないと、正式な事業者とみなされず、補助金・助成金に申請できません。実際に事業を行っていても、国や自治体では事業を正式に開始している人のみを支援対象としています。

開業届を出していないと、申請できない制度は以下のとおりです。

  • 創業補助金
  • 小規模事業者持続化補助金
  • 自治体の起業家支援制度
  • 設備投資の助成金
  • 緊急時の支援金

開業届の提出日は、補助金申請時にも影響します。申請条件に「開業後1年以内の事業者が対象」とあれば、開業届に記載された日付が基準です。

家族への給与を経費にできない

開業届を出さないと、家族に支払う給与を経費にできません。家族への給与が経費にできるかどうかは、申告方法によって異なります。青色申告を選んでいる場合は、生計を一にする配偶者や親族への給与を必要経費にできます。白色申告では、家族への給与を経費として認めてもらえません。

家族への給与を経費に計上するには、開業届と青色事業専従者給与届出書を出し、適正な給与額を設定する必要があります。所得が多い場合は、家族に所得を分散させて世帯全体の税負担を減らせます。

3年間の赤字繰越しができない

開業届を出していないと、事業で出た赤字を将来の黒字から差し引くことができず、節税の機会を失います。青色申告を選択していれば、最長3年間赤字を繰り越し、翌年以降の所得から控除できます。初期投資や広告費がかさむ事業立ち上げ時は、赤字繰越控除が重要です。

開業届と青色申告承認申請書を出していない場合、白色申告扱いとなり、赤字を繰り越せません。翌年に黒字になっても、前年の赤字を差し引けず税負担が増えます。

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デメリットを考慮した開業届を出すかどうかの判断基準

開業届を出すかどうかの判断は、年間売上の見込みや事業計画によります。開業届を出す判断基準は以下のとおりです。

  • フリーランスや副業の場合
  • 継続的な収入がある場合

フリーランスや副業の場合

フリーランスや副業をしている場合、収入状況や今後の事業展開によって、開業届を出すかどうかの選択は変わります。短期的な負担だけでなく、長期的なメリットも踏まえたうえで、慎重に判断する必要があります。開業届を出すべきケースは以下のとおりです。

  • 年間売上が48万円を超える見込みがある
  • 将来的に補助金や融資を利用したい
  • 屋号付き口座や事業用クレジットカードを利用したい

副業の場合は、本業の会社に知られるリスクや、扶養を維持するための収入制限(年間103万円以内)にも注意が必要です。

継続的な収入がある場合

継続的に安定した収入がある場合は、開業届を出すメリットが大きくなります。安定収入があることで、青色申告による最大65万円の特別控除など、各種税制優遇を最大限に活用できます。安定収入があると得られる主なメリットは以下のとおりです。

  • 必要経費を計上できる
  • 節税対策がしやすくなる
  • 銀行融資を受けやすくなる
  • 取引先からの信用が高まる
  • 小規模企業共済に加入できる

安定収入があれば、社会保険の切り替えや扶養外れによる負担にも無理なく対応できます。健康保険料や年金の支払いが増えても、安定した収入があればカバー可能です。事業を大きくするなら、早めに開業届を出して、公的な事業者としての立場を確保しておくのがおすすめです。

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開業届のデメリットに関するよくある質問

開業届のデメリットに関するよくある質問をまとめました。開業届を出すか検討している人は参考にしてください。

開業届を出したら会社にバレる?

開業届を税務署に出しても、会社に直接通知されることはありません。税務署には守秘義務があるため、開業届の内容が会社など第三者に知られることはありません。副業が会社にバレるきっかけは以下のとおりです。

  • 確定申告書の控えを会社に提出する
  • 源泉徴収票と確定申告の内容に不一致がある
  • 就業規則違反に該当する
  • SNSなどで情報が漏れる

会社の就業規則で副業を禁止している場合、開業届を提出したことではなく、副業自体が問題となるため注意してください。会社のルールを必ず確認しましょう。副業が認められている会社であれば、開業届を出してもバレるリスクはほとんどありません。
» 副業禁止でも合法的に副収入を得る方法を紹介
» 副業がばれない方法はある?会社にばれにくい副業の特徴と種類

開業届をさかのぼって出せる?

開業届は期限を過ぎてもさかのぼって出すことができます。開業届は原則として開業から1か月以内ですが、期限を過ぎても罰則はありません。開業日は実際に事業を始めた日を記入してください。開業日がわからない場合は、初めて取引や収入が発生した日を基準にしましょう。

さかのぼって開業届を出す際は、青色申告の特典に注意が必要です。青色申告を希望する場合は、開業から2か月以内、または最初の確定申告期限までに青色申告承認申請書を提出しなければなりません。申告期間を過ぎていると、青色申告による特典を受けられない可能性があります。

過去の所得に申告漏れがある場合は、修正申告が必要になることもあります。

開業届を出していなくても確定申告は必要?

開業届を出していなくても、年間20万円を超える事業所得がある場合は確定申告が必要です。所得税法にもとづく規定であり、開業届を出しているかは関係ありません。確定申告の義務は収入額によって決まります。副業やフリーランスとして活動している場合でも、年間20万円を超える所得があれば申告が必要です。

会社員も本業とは別に20万円を超える所得があれば申告が必要です。開業届を出していなくても確定申告はできますが、以下の制限があります。

  • 青色申告による各種特典を受けられない
  • 白色申告での申告となる
  • 青色申告特別控除(最大65万円)が利用できない

申告期限は原則として翌年の2月16日〜3月15日までと決まっているため、期限を過ぎないよう注意が必要です。

まとめ

開業届を出すかは、メリットとデメリットをよく理解したうえで判断しましょう。開業届を出すことで、青色申告の多くのメリットが得られますが、記帳義務や確定申告の負担が増えるデメリットもあります。

社会保険の扶養から外れるリスクや失業保険が受給できなくなるデメリットもあります。会社員として副業を行う場合は、会社の就業規則も必ず確認しましょう。事業規模や収入見込み、生活状況を踏まえて、自分にとって最適なタイミングで開業届を出すことが重要です。

開業届のメリットとデメリットを理解し、後悔のない選択をしましょう。

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