個人事業主とフリーランスは似た働き方に見えますが、税金や手続きに違いがあります。制度の違いを理解していないと、確定申告や年金、開業手続きなどで損をする可能性があります。収入の申告方法や年金の種類、開業の届け出の有無などが異なるため、自分の働き方に合った制度を選ぶことが大切です。
この記事では、個人事業主とフリーランスの定義や制度の違いを整理しています。記事を読めば、個人事業主とフリーランスの違いを理解でき、自分に合った働き方を見つけられます。
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個人事業主とフリーランスの主な違い

個人事業主とフリーランスには共通点もありますが、定義や制度の上では違いがあります。個人事業主とフリーランスの違いは以下の2点です。
- 個人事業主とは個人で独立した事業を営む人
- フリーランスとは企業や団体に所属せず仕事を請け負う人
個人事業主とは個人で独立した事業を営む人
個人事業主とは税務上の区分としての呼び方であり、法人を設立せずに個人で仕事を行い、利益を得ている人のことです。税務署に開業届を提出することで個人事業主になります。個人事業主の該当例は以下のとおりです。
- 飲食店の経営者
- ネットショップの運営者
- 自宅で教室を開く講師など
個人事業主には所得税や消費税の申告義務があり、青色申告を選ぶと控除を受けられます。事業の規模は人によって異なり、従業員を雇うことも可能です。職種に制限はなく、自由度の高い働き方ができる点も特徴です。
» 個人事業主になるために必要な準備と手続きを解説
» 個人事業主と法人の違いをわかりやすく解説!
フリーランスとは企業や団体に所属せず仕事を請け負う人
フリーランスとは、企業に雇用されずに自ら仕事を受けて働く人を指します。仕事内容にはライターやプログラマー、カメラマンなどがあり、多様な分野で活躍しています。
フリーランスは、働く時間や場所を自分で選べる自由なスタイルが魅力です。一方で、安定した収入や社会保障の面では課題もあります。税務署に開業届を提出している場合は、税務上は個人事業主として扱われます。「フリーランス」は働き方を表す言葉で、「個人事業主」は税務上の立場を示す言葉です。
個人事業主とフリーランスの具体的な違い

個人事業主とフリーランスは法律上の扱いや実務の内容などに明確な違いがあります。個人事業主とフリーランスの働き方や生活設計に関わる主な違いは、次の4つです。
- 法的な違い
- 実務的な違い
- 税金の違い
- 年金の違い
法的な違い
個人事業主とは、税務署に開業届を提出した人のことです。法律上、個人事業主は「事業を行っている個人」として国から正式に認められた立場になります。フリーランスという言葉には明確な定義がなく、企業に雇用されず自分で仕事を請け負っている人に対して用いられます。
個人事業主は「制度に登録された働き方」であり、フリーランスは「雇用に縛られない働き方」です。開業届を提出していない場合、税制上の優遇措置や公的支援を受けられない可能性があります。
実務的な違い
個人事業主は開業届を税務署に提出しているため、帳簿の記帳や確定申告などの義務が明確に定められています。多くの個人事業主は、屋号を使って請求書を発行しています。フリーランスと比較すると、個人事業主は会計ソフトを使って収支を管理し、事業として運営体制を整えていることが多いです。
フリーランスは副業や短期間だけの活動にとどめているケースが多く、会計管理が簡易的です。開業届を提出していない場合は青色申告を利用できず、節税の面で不利になることがあります。継続的にフリーランスとして活動するには、帳簿を管理し、可能な範囲で節税できる体制を整えておくことが大切です。
税金の違い

個人事業主は毎年確定申告が必要です。青色申告を選択すると最大65万円の控除を受けられます。青色申告を行うと複式簿記によって帳簿を記録する必要があり、赤字が出た年の損失を最大3年間繰り越せます。節税につながる制度を活用できる点が個人事業主の大きな強みです。
フリーランスで働いていて開業届を提出していない場合、申告方法は白色申告のみになります。白色申告は控除額が少なく、帳簿の形式も簡易的です。税務署へ開業届を提出して青色申告に切り替えることで、より有利な税制を適用できます。
» 副業で確定申告してない人が多い理由とバレるリスク
» 副業の確定申告のやり方を解説!
年金の違い
個人事業主もフリーランスも、基本的には国民年金に加入します。個人事業主は、国民年金基金や小規模企業共済などの公的制度に申し込みやすい立場です。制度を活用すると、積み立てた資金を将来の年金として受け取れます。掛金は全額を所得控除にできるため、節税が可能です。
開業届を提出していないフリーランスは、国民年金基金や小規模企業共済などの制度に加入できない場合があります。将来の生活に備えるには早めに開業届を提出し、年金関連制度の利用ができる個人事業主への転身を検討しましょう。
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個人事業主とフリーランスのメリットの違い

個人事業主とフリーランスの違いを以下で解説します。
個人事業主のメリット
個人事業主は、税制上の優遇措置を受けられるのがメリットです。青色申告を選択すると、最大65万円の控除が適用されます。個人事業主は帳簿を作成し、事業にかかった支出を収入から差し引くことで、納める税金を減らせます。
税務署に登録された事業者として正式に認められるため、助成金や融資を受ける際も有利です。国民年金基金や小規模企業共済など、将来の年金を増やすための公的制度にも申し込みやすくなります。長期的に安定した働き方を目指す人にとっては大きなメリットです。
フリーランスのメリット
フリーランスとして働くメリットは以下のようなものがあります。
- 働く時間や場所を自由に決められる
- 生活スタイルに合わせた働き方が実現しやすい
- 得意な分野に集中して業務を行える
- 仕事へのやりがいや成長を実感しやすい
フリーランスは、開業届を出さずに手軽に仕事を始められます。働き方の自由度が高く、ライフスタイルを優先したい方に適した選択肢です。
» 仕事にやりがいを見つける具体的なステップを解説
個人事業主とフリーランスのデメリットの違い

個人事業主とフリーランスのデメリットの違いを解説します。
個人事業主のデメリット
個人事業主になると、確定申告に伴う帳簿作成の必要があるため事務作業の負担が増えます。青色申告を利用するには、複式簿記のルールに従って帳簿を作成しなければならないため一定の会計知識が必要です。年間の売上が一定額を超えれば、消費税の申告も必要になります。
個人事業主は、国民年金や国民健康保険に自分で加入しなければなりません。保険料や税金の支払いについても自己管理が必要です。各種手続きを自分で行うため、慣れるまでは大きな負担に感じることもあります。
フリーランスのデメリット
フリーランスは、働く時間や場所を自由に選べる働き方です。会社に雇用されていないため、収入が安定しにくくなります。社会保険や雇用保険には加入できないため、病気やけがで働けなくなったときに受けられる保障は限定的です。
開業届を提出していない人は、税制上の優遇措置を受けられません。経費を申告する際にも不利になる場合があります。フリーランスとして安定して働き続けるには、収入減への備えが必要です。
個人事業主とフリーランスの始め方

個人事業主とフリーランスとして働く際に特別な資格は必要ありませんが、最低限の手続きや準備は必要です。正しい手順を知っておくと、スムーズにスタートできます。以下の2つに分けて、基本的な始め方を紹介します。
- 個人事業主の始め方
- フリーランスの始め方
個人事業主の始め方
個人事業主として開業するには、以下の手順で必要な準備を進めます。
- 国税庁の公式サイトから「開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)」を取得する
- 開業届を税務署に持参、郵送、または電子申請のいずれかで提出する
- 青色申告を希望する場合は、「青色申告承認申請書」も併せて提出する
- 事業開始から1か月以内にすべての届け出を完了する
開業届を提出しておくと帳簿作成や経費の管理が制度に沿って進めやすくなります。屋号を設定すると名刺や請求書に事業名を記載でき、取引先からの信頼を得やすくなります。開業と同時に会計ソフトや帳簿の準備も進めておくと安心です。
青色申告や各種控除などの制度を利用するには、正確かつ早めの手続きを心がけましょう。
» 開業届の正しい書き方と提出方法を解説
» 個人事業主の開業届の記入方法と提出手順を徹底解説!
フリーランスの始め方
フリーランスとして働き始めるには、仕事を受注できる状態を整えることが大切です。以下の設備やスキルを事前に準備しましょう。
- パソコンやネット環境などを整備する
- 実績やプロフィールを用意する
- クラウドソーシングやSNSで仕事を探す
- 知人や前職の人脈を活用する
副業として始める場合や短期間のみの場合は、税務署に開業届を提出しなくても仕事ができます。開業届を提出していない場合は、青色申告や国民年金基金などの制度を利用できない点に注意しましょう。税金面や将来の備えにおいて不利になる可能性があります。
今後も継続してフリーランスとして活動する場合は、早めに開業届を提出して個人事業主になることをおすすめします。
» 副業で開業届を提出するメリットとデメリットを紹介
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個人事業主やフリーランスとして成功するコツ

個人事業主やフリーランスは、個人で働くことには自由がある反面、自分の力で仕事を獲得し続ける努力が欠かせません。個人事業主やフリーランスとして成功するための3つのポイントを以下で解説します。
- 人脈を広げる
- スキルアップを継続する
- 自己管理を徹底する
人脈を広げる
個人事業主やフリーランスが仕事を安定的に受注するには、信頼できる人とのつながりを築くことが重要です。知人からの紹介や過去に関わりのあった人から仕事を依頼されることもあります。紹介で仕事を受注できれば、自分で仕事を探すよりも効率が良く、継続的に仕事を得られる可能性も高まります。
仕事に関する情報のSNS発信や業界のイベントや勉強会への参加は人脈を広げるのに効果的です。会話の中で自分の仕事内容や得意分野を自然に伝える機会を増やすと、新しい仕事につながるきっかけが生まれます。
出会った人との関係を丁寧に築き信頼されることで、継続的に仕事を受注しやすくなります。
スキルアップを継続する

個人で仕事を続ける場合は知識や技術を常に更新し、新たなスキルを身に付けていく姿勢が必要です。本を読んだりオンライン講座を受講したりして、少しずつでも学習を継続しましょう。
継続的な学習によりスキルを高めていけば、より良い仕事のチャンスや報酬アップにつながる可能性が高まります。できることの幅を広げていく努力を続ける姿勢は、信頼と実績を築くための土台になります。
自己管理を徹底する
個人で働く場合は、仕事のスケジュールや体調の管理をすべて自分で行う必要があります。毎日の勤務時間をあらかじめ決めて作業を進めたり、体調を崩さないように生活リズムを整えたりすることが大切です。依頼された仕事の納期を守ることや丁寧なやりとりを継続することが、クライアントからの信頼につながります。
業務が立て込んでいても、無理をしすぎずに休息の時間を確保しましょう。安定して仕事を続けるには、働く本人が自分の体調や生活をきちんと管理する力を持つことが大切です。継続的に自己管理ができる人は、安心して仕事を任せてもらえる存在になります。
個人事業主とフリーランスの違いに関するよくある質問

個人事業主やフリーランスの違いに関するよくある質問について、以下のとおり解説します。
- 開業届を出すメリットは?
- 個人事業主やフリーランスの収入は安定する?
開業届を出すメリットは?
開業届を税務署に提出すると、税務上の個人事業主として正式に登録されます。個人事業主として登録されると、税制や事業運営に関する各種制度を利用できるようになります。開業届を提出するメリットは以下のとおりです。
- 青色申告が使え、最大65万円の控除が受けられる
- 複式簿記で記帳すれば、赤字を3年間繰り越して節税できる
- 屋号を設定し、名刺や請求書に事業名を使える
- 助成金や補助金の申請対象になりやすくなる
- 金融機関や取引先からの信用を得やすくなる
白色申告でも経費の計上は可能ですが、青色申告の方が控除額や節税の点で有利です。事業を継続的に行っていく予定がある場合は、早めに開業届を提出しておくようにしましょう。
» 青色申告と白色申告の違いを解説!税制面での優遇措置とは?
個人事業主やフリーランスの収入は安定する?
個人事業主やフリーランスは働いた分だけ収入が得られる仕組みです。業務量が少ない時期には、収入が大きく減少することもあります。会社員のように毎月決まった給料が支払われるわけではないため、収入の面では安定しているとは言いにくい点が特徴です。
継続的に仕事を受注できるように工夫したり、複数の取引先を確保したりすることで収入を安定させることは可能です。収入の増減を見越して、あらかじめ貯金や生活費の計画を立てましょう。仕事の受注方法や資金管理を工夫することで徐々に安定した働き方に近づけます。
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まとめ

個人事業主とフリーランスは会社に雇用されずに働けますが、制度や手続きの仕組みには違いがあります。税金や年金の取り扱いにも差があるため、自分の働き方に合った制度を選びましょう。開業届を提出すると個人事業主として税制上のメリットを受けられる場合があります。
安定して仕事を続けるには、仕事の受注方法や資金管理などの工夫を行いましょう。自由な働き方を選ぶためには、関連する制度の内容を把握し、自分に必要な準備を整えることが重要です。個人事業主とフリーランスの制度や手続きの違いを正しく理解し、自分に最適な働き方を見つけましょう。
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